すーぱーふぃくしょん

俳優おたくの戯言(だいたい惚気)

【感想】\全38役の一人芝居! ご予約はお早めに!/成河さん「フリー・コミティッド」

チケット代6,900円。どう感じますか?

 

「安い」「高い」「ちょうどいい」「ふらっと観に行っても良いかも」「すっとは出せないけど好きな役者が出てるなら全然あり」「安いか高いかは出演者と製作陣と内容(ストーリー、劇場、上演時間)による」「その時の懐次第」「1テニミュ以上」「6,900円」などなど。各々違った印象をお持ちかと思います。

ましてやこれが「ひとり芝居」であるならばどうでしょう。上演時間2時間。出演者一名。「一人38役」。いかがですか?

 

チケット代の高い安いの基準は個人差があると思うので一概にどうとは言えませんが、6,900円出してとある俳優さんの「ひとり芝居」を観劇してきました。

 

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センスのいいビジュアル

▼あらすじ
ニューヨークの超絶人気レストラン。予約は数ヶ月先まで目一杯手一杯!
売れない俳優サムはレストランの予約受付係としてなんとかご飯を食べている。
新規のお客様からVIP客、クレーマー、友人、マウンティングマン(笑)、家族などなどひっきり無しに掛かってくる予約や問い合わせを捌きながらも、従業員からの内線やひとくせ(以上もある)シェフからの内線まで、サムはてんやわんやで汗だくになりながらも必死で対応します。
すべての要求に出来るだけ応えるために。
彼の焦りと苛立ちがピークに達した時、彼が起こした行動とは……。

 

▼感想
笑いました。めちゃくちゃ楽しかった!漫談というか落語のような、とてもスピーディかつテンポの良い濃密な2時間!台風みたいでした。どんな肺してるんだろ。コメディ作品ですが、ヒューマンドラマでもありサムという一人の人間の成長譚でもあります。
「翻訳劇」につきものですが、アメリカンジョークだったりニューヨークの文化や土地のこと、時事問題や風刺など日本ではどうにも分かりにくい部分もあるのですが、核心にあるものや起承転結はとてもわかりやすいので、ケラケラ笑って笑って驚いて、考えさせられる作品でした。

 

根底にあるのは「都会での生活」と「人からの要求に応える(応えなければならない・応えたくなってしまう)こと」とその「ストレス」のような感じです。そして「自分が何を選び取るのか」。
仕事をしている以上、他人からの要求が常に目の前にある。上司からの指示であったり、チームとしての指針だったり、そもそもそれをやるのが仕事、であったり、基本的には応えなきゃいけなくて、応えるのが通常。断ることができるのか。自分主体で、「選択」ができるのか。
業種や、立場や、TPOによって様々だと思うんですが、「ああ現代の話だなあ」って思うシーンがところどころあって。わたしは「レストランの予約係」という仕事ではありませんが、サムに起こる出来事やふきかけられるアレコレに覚えがあったり、共感することもたくさんありました。登場人物にムカついたり笑ったり「この人好きだな」と思えたり。「共感」させてもらえるのって、舞台観劇に没入できる一つのエッセンスですごく心地がいいです。サムがいいやつなのも心が入っていきやすくていい。主人公を好きになれるかってかなり重要ですよね。

 

***

 

38役演じることっていうトピックに頭が持っていかれそうですが、あくまで主軸は「サム」という一人の男性。”38人を使ってサムを表現する作品”と成河さんがおっしゃっていたのがまさにそれだなという感じです。サムが相手する人たちが、電話越しなのにその人の風貌や性格や個性が見て取れるのがすごく楽しかった!個性とか性格についても考えさせられるものでした。わたし自身は何も突出した個性的な部分はないと思っているんですがそれも他人から見たらどう思われてるかわかんないし自分で気づいてない「癖」とかあるかもしれない。

\ご予約はお早めに!/というキャッチコピーも、ダブルミーニングとしてすごく効いてるな、なるほどな!と思いました。

 客入れの音楽もセンスがいいし、「あ、クリスマスの時期の話なのかな」って思えたりして楽しかった。

 

そしてエンディング曲!それきたかーーーーー!!!!って感じです。椎名林檎嬢。なぜその曲なのかは観たらわかります。ふふふ。はあもうグッときた。パンフレットはぜひ読んでほしい。

 

***

 

成河さんといえば最近だと『髑髏城の七人』 Season花の天魔王様はもちろん有名ですが、歌もダンスも抜群ですよね。
美女と野獣」の日本語吹替え版ルミエール(爆イケ)だったり「グランドホテル」「エリザベート」だったり。ひょっとこ乱舞時代の成河さんはみたことがないのですが、わたしの推しが彼をめちゃくちゃ尊敬していてそれで興味を持ちはじめました。初めて見たのは2013年の「ショーシャンクの空に」です。

とにかく舞台人として抜群のセンスや知的な考え方をもった俳優さんだとおもいます。
そんな成河さんが一人芝居をやるっていうのでずっと楽しみにしていました。しかも38役って。どういうこと!
色々とインタビューを読んでいると、製作陣がこの作品は是非成河さんに!成河さんにしかできない!という意気込みでオファーしたようで、その意味もよくわかるなあと。いやほんと肺どうなってるの。

 

***

 

面白かったというか、感銘を受けた話をインタビューを引用しながら2つ、ご紹介します。


チケット代金と公演数の話


確かこの公演のニュースが出たのは2017年の終わりだったかと思うのですが、当初発表された公演数とチケット代が変わったんですよ。びっくりなのが、「公演数が増えて、チケット代が下がった」ということ。
最初7,500円と発表されていたチケット代金が6,900円に値下がりしたんです。値下がり。

で後からインタビュー記事が上がってきて判明したんですが、成河さん自身が「チケット代金はどうしても7000円より安くしたい(本当はもっと下げたかった)。」「だから公演数を増やした」ということ。

 

小さい空間でやってみたいという欲求がここ数年あったんです。上演する上では小さい空間で長期間演じるのが一番いいけれど、それはなかなか興業側の採算が合わない。今回の『フリー・コミティッド』が200人規模で1か月やれるというのも、なかなかないことですよ。日本語で、些細で地味だけれどとても大切なことを200人の人にしっかり伝えられたら本当に素敵だなと思う。運営上は厳しいけど、どうしてもチケット代は7000円より安くしたくて、公演回数を2、3回増やしたんです。本当はもっと安くしたいのですが、これがぎりぎりで。


「僕はね、演劇はお薬だと思っているんです」


今、どんな問題が起きているのか整理してみようか、というのが劇場での時間。今、自分たちにどういう薬を処方すべきか、というのが演劇だと思っているんです。「この脚本で描かれているのは何だろう」と考えているうちに、今、自分が生きて感じている問題点とリンクしてくるんですね。

「演劇を特別なものにしたくないんです」――『フリー・コミティッド』で一人芝居に臨む成河さんにインタビュー | omoshii

 

そして付随したことをパンフでも言ってました。

“演劇を好きなお客様はそのために劇場に通うんじゃないかと。ただし、間違えてはいけないのは、演じる僕たちが医者として処方箋を出すわけではないということ。僕たちも同時に学ぶべきだと思っています。”

(パンフレットより)

 

***

成河さんの思考や想いがなんかもう優しくてあったかくて知性にあふれていてすごいな!?!?!ってめちゃくちゃ感動したんですよね。ちょうど6月に見た舞台で「劇場」がどんなところなのか、というのに深く触れる出来事があって、なおさら沁みました。観る前から楽しみだったのですが、実際に観劇してやっぱり観てよかったな、来てよかったな、ああ、嬉しいなって思いました(そして見ながらその場にいない推しぴへの愛を募らせました)。ひとり芝居、楽しいなあ。贅沢だなあ。

 

6,900円。常にジリ貧のわたしにとっては「安い」金額でもないんです。だけど、高くなかった。全然高くなかった。お値段以上。成河さんのひとり芝居をあの距離間で味わえたこと、成河さんの演劇への姿勢や思いを感じ取れたこと、あの空間にいられたことはとっても豊かで、意味のある、素敵な経験を買えたなあと大満足です。舞台美術もすごかった!!原田愛さんだもん!納得!!!!


7/22までやっていて、当日券も毎日ありますし日程によってはプレイガイドや制作元から購入できると思います。だけどご予約はお早めに!劇場は渋谷か表参道が最寄りだよ!お時間がある方、興味がある方、是非是非!

 

最後に、成河さんの素敵な言葉をご紹介して終わります!


「僕は、劇場という場所を『自分とは異なる考えを持つ人とも、ここでは一緒にいられた』と思える空間にしたい。」

 

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\全38役の一人芝居! ご予約はお早めに!/
成河さん「フリー・コミティッド」
■日程:2018年6月28日(木)~7月22日(日)
■会場:DDD 青山クロスシアター
■料金:一般 6,900円
■上演時間:約2時間(途中休憩なし)
■当日券:全日程有り。各回、開演の1時間前より先着にて。

■作:ベッキー・モード
■翻訳:常田景子
■演出:千葉哲也

 

■出演:成河
webサイト