すーぱーふぃくしょん

俳優おたくの戯言(だいたい惚気)

【読了】出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと

10日後の給料日まで2,100円で過ごさないといけないのに1,300円の本を買った(税込1,404円)。めちゃくちゃ面白かった。本で腹は満たされないけど胸は満たされるものだなと思った。

 

内容はまったくタイトル通りで(それにしてもいいタイトル)、70人もいれば男も女もクズも女神も善人も変人も天才も神もいる。神というのは仏のように良いひと的な意味ではなく、おたくの世界で言うところの「まじ神」的な存在だ。ちなみにこの「神」的存在との邂逅エピソードは特にわたしのピュアピュアなハートに刺さりまくった。読みながら身悶えた。著者の花田菜々子さんと全く同じ感情をわたしも知っている。だってわたしにもいろんな世界の「神」がいるから。
普通に過ごしていたら絶対に出会わなかった70人。花田さん自身が行動したからこそ得た出会い。「出会い」の全てがプラスだったとは言えないけど、だからといって何も得ていないというわけではないのが花田さんの素敵なところだ。クズから学ぶ事もある。「出会い系サイトで出会った人に、合いそうな本を勧める」という魑魅魍魎、百鬼夜行の旅は結果的に花田さん自身のきらめく成長潭となった。
 
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▼本の紹介(書影かわいすぎ)
-本の目次-
  • プロローグ:2013年1月、どん底夜0時
  • 第1章:東京がこんなにおもしろマッドシティーだったとは
  • 第2章: 私を育ててくれたヴィレッジヴァンガード、その愛
  • 第3章 :出会い系サイトで人生が動き出す
  • 第4章 :ここはどこかへ行く途中の人が集まる場所
  • 第5章 :あなたの助言は床に落ちてるホコリみたい
  • 第6章 :私が逆ナンを身につけるまで――――そしてラスボス戦へ
  • 第7章 :人生初のイベントは祖父の屍を越えて
  • エピローグ:季節はめぐる、終わりと始まり
  • あとがき 2017年秋、本屋の店先で
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▼魑魅魍魎 百鬼夜行 ヤリモククズメンガチャ(リアル)

色々あってその日の宿にも悩むようなどん底生活に取り残された花田さんがなぜ出会い系アプリで出会った人に合いそうな本を勧める活動を始めたかについては本を読んでもらうこととして、実際に「人と会う」ことを実践し始めて最初に会った人が4人くらいが揃いも揃ってまぁ……簡単に言ってしまえば「ハズレ」だった(お察し案件である)。ハズレっぷりがあまりにもアレで花田さんの感想含めて面白すぎるので是非冒頭の40ページほどだけでもまず読んでほしい。ソーシャルゲームガチャで言うところのN(ノーマル)にも満たない案件だよ!わたしの鯖ではきっとレアは出ないんだわと早々に諦めるレベル。何連引いてレア確定とかいうレベルじゃないしな。
花田さんのすごいところは、どんなに萎え案件でも「その人に合いそうな本をすすめて」というコンセプトをブレずにやりきるところ。
 
ヤリ目クズメンガチャと化しそうな花田さんの旅は、5人目のIさんとの出会いを機に好転し始める。
ただただ純粋に、単純に、「楽しい会話」が弾んで、会話の中で自然に「この人には絶対読んでもらいたい!」という本が浮かんで、良い形で紹介できること。そして相手にも良い反応をもらえること。それがどれだけ貴重で、楽しくて、嬉しいことか。いやほんとに「普通」とか「まとも」とか「ふつうに会話が成立する人」ってびっくりするほど少なかったりする(自分を棚に上げて言う)。
花田さんの旅は自分自身を少しずつ「熱狂」させた。
 
ある時まで、ヴィレッジヴァンガードという職場が花田さんの世界の中心だった。仕事が楽しくて楽しくて仕方ない時もあったけど、時代の移り変わりとともに職場の方向性も変わり、それらの変化は花田さんの情熱を削いでいった。
「旅」を続けていくうちに、花田さんの興味関心はそれまで中心にあったヴィレッジより"外"の世界に向くようになった。
外の出会いが楽しくて濃いものに感じるようになった。
 
その出会い系サイトを使って出会いを求めていく人々を、花田さんは「どこかへ行く途中の人」と表現している。
 
"みんなが不安定さを礼儀正しく交換し、少しだけ無防備になって寄り添っているみたいな集まりだった。
と思ったけど、もしかしたら世界全体もほとんどそうだったりして?"(p114)
ネット婚活・ネット恋活・出会いアプリがもはやスタンダードとも言える時代になってきたとはいえ、「出会い系サイト」というとどうにもおおっぴらに言えないような、隠したいような、口に出してはいけない系ワードのように感じている部分がある手前、花田さんのこの表現がとても優しくて、すきだと思った。少しだけ無防備になって寄り添っている。多分本当にその通りで、ある意味リアルよりリアルなのかもしれない。リアルの友達には言えないようなことも、ネットの(twitterや推しごとを通した)友達には言えることって多くある。おたくってそういうとこあるでしょ(わたしなんてもうリアルの友達との付き合いほぼ皆無)
 
 

▼花田、神と会うってよ

魑魅魍魎とのタイマンエンカウントを繰り返し、戦闘力を上げた花田さんにとって平和的様式美の集合体である「合コン」は物足りなさすら感じられた。ぬるい。ぬるすぎる。
結果、花田さんは「逆ナン」の術を身につける。恋愛目的ではなく、ただ純粋に「素敵だな」と思った人と仲良くなるためだけの、シンプルな逆ナン。下心のない、シンプルでカジュアルな逆ナンスキルをモノにした花田さんはますますレベルアップしてゆく。
 
"「会いたい」と言えるだけのちゃんとした理由があれば、そんな特別なことではなく、だいたいの人とは会えるものなのだ。"(P154)
 
いやぁ、響く言葉すぎるぅ。ほんとにそうだなと思う。
 
 
レベルがあがれば辿り着く先は「ラスボス」なのが旅の道理だ。
最初に触れた、花田さんの「神」との遭遇。今までいろんな「未知との遭遇」を経験してきた花田さんにとって、神との遭遇とはこれまでと比較にならない「緊張」を生む。
 
花田さんにとっての「神」とは、この世でいちばん好きな本屋さんのオーナーだった。その人に会いに行くために頑張りまくった(しかも遠征!!)エピソード。
本の中には、花田さんの「神」との出会った時の感動と衝撃や、「神」たる所以や、花田さんにとって「神」がどういう存在なのかが、それはそれは素敵な言葉で綴られている。飾りっ気もなくまっすぐな言葉で、その時の花田さんの興奮が記されている。それがとてもみずみずしくて、キラキラめらめらした感情はまるで恋と似ていて、わたしのような「おたく」的人種には身に覚えがありすぎる、愛おしい感情だった。
「神」に会いに行く経緯、道中の花田さんの挙動、興奮、感動、熱狂、安心、感銘、反芻。きらめく全ての感情。この本を読むすべてのおたくたちは思い出すだろう。一目惚れした俳優に二度目ましてで会いに行くあの日のこと。何かしらのメディアを通して好きになった俳優を初めて見に行くあの日のこと、大好きな憧れの作家さんの新刊を買いに行くあの日のこと、テレビの中のあのアイドルのコンサートに初めて足を運んだあの日のこと。非実在なんかじゃなかった。推しは実在してたんだ!と感動したあの日のこと。
 
花田さんの宝石みたいなこの出来事に、一緒にキュンキュンバタバタしてほしい。そしてよかったね、よかったね!ってニコニコしてほしい。
 
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本とか、お芝居とか、俳優の好みとか、なんなら服の好みに至るまで全部、結局はその人そのものを表しているんだと思う。
 
なんでその本を勧めるのか、なんでそのお芝居が好きなのか、「好き」の対象物を語るときってその人そのものを語ってるようなものだなと思う。
 
「わたしはこんな人です、こんな性格です」なんて全然言葉で説明できないし、自分のことは自分がよくわかっているつもりだけど、客観的には見れてないし。そもそもおたくやってる時の自分ってリミッター外れてるし、主観でしか動けてないのかも。長所を短所的に言うこともできるし、どう考えても短所なのにハイパーポジ目線によって謎に長所に言いかえることだってできなくもない。
 
それよりこういう舞台音楽服漫画映画がすきですって言った方が「なるほどそういうタイプね」ってわかってもらえるような気がする。
 
 
ぶっちゃけわたしは普段読書する習慣がない。ほぼない。まじでない。でも面白いと言われたものは読みたくなるし、実際この本も幼馴染ちゃんにオススメしてもらったものだ。買ってよかった。
わたしの本棚はクドカン松尾スズキみうらじゅんのエッセイもしくは壇蜜ちゃんの日記、銀座のママとかが書いてるようなモテエッセイ、好きな舞台の原作・戯曲、そのほかおたくカルチャーの本しかない。そんなわたしだけど、この本の中で紹介されていた本はどれもとても面白そうだった。「こんなひとだからこの本を勧めた」の理由がキャッチーで、読んでみたい!と思う本がたくさんあった。若手俳優おたくの皆さんが読んでる本とかあれば是非教えて欲しいなー。
 
あとこれは純粋に、舞台とか見るにあたって「教養」や「知識」は財産だと思う。この作品のこの部分はあの作品のオマージュなんだねとか、この表現はあれを比喩してるんだねとか。点と点の知識が線になって、その線が今度は面になって、立体になってストーンと自分の腑に落ちる知的興奮をもっと味わいたい。
 
 
最後の英世もとうとう私の元を去った。
金曜日は久々に諭吉との再会だ。会いたかったよ。会いたくて会いたくて震える。金なくてマジなくて笑える。君想うほど遠く感じてーーー。
 
週末は本屋へ行こう。