すーぱーふぃくしょん

俳優おたくの戯言(だいたい惚気)

【感想】EPOCH MANひとり芝居「Brand new OZAWA mermaid!」

 
(ネタバレしかしていない)(長い)


東京という街が好き。
Tokyo。トーキョー。東京。

「東京」と名のつくものも好き。東京事変とか東京砂漠とかクリスタルトーキョーとか。東京03とか。

趣味のために上京してきた私にとって東京は、憧れであり、エンタメであり、雑多でごちゃごちゃしてて洗練されてて、刺激的な街だと思う。
「東京」を色で表すなら、そうだなぁ黒とかグレーとかシルバーとか、ピンク。マゼンタピンク。蛍光ピンク。

地方者というバックボーンがあるからか、登場人物がどこかから東京へやってきて…という物語に弱い。劇団鹿殺しの電車シリーズとか。「おら東京さ行くだ」とか。


今回見たお芝居も、とある女の子が東京へやってくる話だった。
さて、どんな女の子でしょう?



人魚姫、です。


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小沢道成さんという俳優の新作一人芝居*1EPOCHMAN 「Brand new OZAWA mermaid!」をみてきた。一回だけのつもりだったけどあまりにも良すぎて追いマーメイドしてきた。生足魅惑のマーメイド。

EPOCHMANとは
虚構の劇団に所属する俳優・小沢道成が、2013年から始めた演劇プロジェクト。

人(特に女性)の心の中をえぐり出すような作風と、繊細かつ粘り気がありながらスピード感ある演出が特徴のひとつ。
問題を抱えた人物が前進しようとした時に生まれる障害や苦悩を丁寧に描きつつも、演劇ならではの手法で会場を笑いに誘う。

上演時間:70分〜80分以内を目指すお尻に優しい時間設定

毎公演ごと、外部で出会ってきた好きな俳優・スタッフ陣、様々な仲間を巻き込むプロデュース企画を展開していく。
 


 

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ビジュアルどーん。
作・演出・美術・演者、全部小沢さん。
ドラムパーカッションの生音演奏あり。
はいコレ絶対面白いー
はい確信ー
チケ代いくら?3500円?!?!安っ
て思って見に行ったらやっぱり間違いなかったやつでした。
 
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小沢さんは、「この人のお芝居は逃さず見ていきたいな」と思っている俳優の1人で、マイノリティーに属する役柄を演じることが多い人、というイメージがある。そもそも女の子とか。根本宗子『もっと超越した所へ。』ではゲイの男性を演じていた(最高だった)。
今回のひとり芝居では性別云々というより"人魚"であること=人間ではない者というマイノリティを演じていた(地球にとって人間がメジャーであるという保証もないけど)。


人間の王子様に恋をした人魚姫が、声と尾ビレと引き換えに二本脚を手に入れ王子に会いに行く有名なおとぎ話。
最後には泡になって消えてしまう悲しい結末だ。アリエルの物語は別だけど。
小沢さんは、どうしてこんなに悲しい結末になってしまうんだろうってずっと思っていて、なんとか報われて欲しい、なんとか幸せになりたい、なんとか不幸にだけはなりたくないと思って、この物語を作ったそうです。
 

小沢さん演じるヒメコは、人間界に強く憧れる人魚姫。「恋」というものに興味があった。
ヒメコは人間界の本が大好きだった。特にa○anはヒメコのおませなハートをハチャメチャにときめかせた。
恋占い、恋の駆け引き、セックス特集。an○nを手に、お魚さんたちとガールズトークを弾ませる毎日。
ヒメコは恋というものをしたかった。

ヒメコには5人の姉がいて、自分よりも早く「海の上」へ出て行った。
姉たちが語る「海の上」の世界は刺激に満ちていた。
何番目かの姉は海の外の世界を「金色」と表現した。
「とにかく金色だったの。金色というより……そうねゴールドって言った方が近いかも。とにかく金色!」と語る姉のときめきや感動が私自身の目に浮かぶようだった。

18歳の誕生日。憧れていた外の世界へ行ける日がやってきた。
やっと、やっと待ちわびたこの日がやってきたのだ!お気に入りの、(きっと地上から落ちてきたであろう)紫色のファンシーなリュックにありったけの本(ヒメコの恋のバイブルだ)を詰め込むヒメコの息は荒く、興奮を隠しきれない様子はまだまだこどもらしくて素直でかわいい。
めちゃくちゃにはしゃいでいたヒメコが、いざ出発というときに5人の姉たちに「行ってきます」と告げる声がとても小さくて、私はそんなヒメコが愛おしかった。緊張と興奮でドキドキしているんだ。わかる。わかるよヒメコ。

「どのお姉様よりも素敵な経験をしなくっちゃ!」と張り切るヒメコがかわいい。そんな気持ちにわたしも覚えがあるもん。


憧れていた、見たことがない世界へ。某四季のようにフライングをするわけでもなんでもない。上からつりさがった梯子を文字通り這い上がっていく演出。小沢さんは男なので、当然その筋張った筋肉質な腕でピキピキと力強く登っていく。たくましい。だけど、その様子がヒメコのまっすぐさや逞しさ、一生懸命さを表していてとても愛おしいシーンだった。

上へ上へと目指すうちに、「水の温度が変わった!」と興奮するヒメコ。
どんどん近づく憧れの世界。
興奮か、嬉しさか、武者震いかわからない、「あぁ」と声が漏れてしまうヒメコ。全てが愛おしかった。

もう少し、もう少しで海の上ーーー。
その瞬間、海面から人間の男の子が落ちてきた。


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初めて、「人間」を見て、触れた。
初めて、恋をした。


完璧だ、と思った。
二本の足が。人間の、二本の足を持った人間の体こそが「完璧だ」とヒメコは思った。


忘れられなくて、どうしてももう一度会いたくて、海の上で暮らすことを望んだヒメコを、彼女の母は咎めた。
「"人魚姫"の物語のように、不幸になるのは目に見えてる」と。「どうか、遠くに行かないで」と母はいう。人間の怖さ、人間界の恐ろしさを説き、ヒメコを思い留まらせようとする。だけどヒメコは自分のことをわかっていた。私のいるところはここじゃない。ここじゃダメなんだって。
「"人魚姫の物語"の人魚姫もきっと、ずっと何かが「足りない」って思っていたんだとおもう。」だから外へ出た。足りない何かを得るために。


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言葉を選ばずに言うと、ヒメコが恋をした相手「ヒメジマ リオ」くんはいわゆるクズ男だった。ヒメコが「完璧だ」と称した肢体を持つ彼は、決して王子様なんかじゃなかった。
おとぎ話と異なり、ヒメコが失ったものは尾ビレだけだったので、名前を伝えることも、好意を口にすることも、セックスを求めることもできた。
リオくんはヒメコと一緒にいて楽しいといい、家と行き場のないヒメコを家に泊め、当然のようにセックスをした。一緒にご飯を食べ、水族館デートをして、クラブに遊びにも一緒に行って踊った。「今日は自分の家に帰ってくれない?」と煙に巻かれ、一人東京の街で夜を明かしたこともあった。リオくんがその日クラブで引っ掛けた女(博多女子)と寝てることも知らずに(次の日ゴミ箱漁って気付くんだけど)。「花火?なにそれ」と真面目に質問したらマジで怖がられたこともあった。「花火大会、一緒に行きたい!」というヒメコのお願いは却下された。リオくんはヒメコに「人魚姫」の本をくれた。古本だったけど、「リオくんからのプレゼントだ!」とヒメコは大喜びして、常に持ち歩いていた。インクの匂い、本の匂い、リオくんの匂い。
海の中には、「匂い」なんてなかった。これが、「匂い」というもの。
○nanを熟読して恋の駆け引きやアレコレを知っていたヒメコは、リオくんは自分の恋人なのだと当然のように思った。ヒメコだけが、そう思っていた。
つらい展開なので割愛するけど、要するにイケイケボンボンヤリピボーイとの距離感をはかれないヒメコはリオくんにこっぴどく捨てられる。広大な地球上で、奇跡みたいな確率の中で私たちが出会ったことは運命だったと説くヒメコの訴えは、泡のように消えていった。
恋を失ったヒメコはボロボロになりながらたどり着いた先は海だった。
明確に説明はされないけど、あそこは崖の上だったんじゃないかと思う。
ヒメコは海にその身を投げ出してしまうのかも、と思った。
だけどそんなエンディングじゃなかった。
絶望したヒメコの頭上に、大輪の光の花が咲く。
大きな、いくつもの花火が打ち上がる。ヒメコが見たいと願っていた花火。
絶望の淵で泣きじゃくっていたヒメコの顔は花火で照らされ、そして笑顔が訪れる。
ここでおしまい。
 
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話の顛末を書くだけじゃ素晴らしさが10000分の一しか伝えられないんだけど、とにかく無性に自分に刺さりまくるお話で、常に涙が止まらなかった。
ヒメコが足を手に入れて東京の街へやってくるシーンなんてたまらなかった。山手線に乗ってるんだよ。元人魚が。それでICカードがないから改札通れなくてあたふたしてるの。「私が人間じゃないから、だから通れないの?」って不安になってるの。
人間にしてくれた魔女のおばちゃんが「何か困った時はこの魔法のカードを使うんだよ!」ってチートアイテムをくれてたんだけどそれがまさかのpasmoなの。笑うし!!!!!
最強のアイテムを得てからのヒメコの無敵っぷりがまた可愛くて。歩き疲れて休んでたところでリオくんと運命の再会をするんだけどそれから流れでリオくんち行っちゃってアッーーーな展開になっちゃうのも笑うし。元人魚だから渇くと死んじゃうので、常に水がないと体の震えが止まらないんだけど、リオくんとつながっている時は震えは治まった。ヒメコは可愛くて素直で純粋で無敵だけど、やっぱりどこか無知で、素直すぎて、痛々しいところも持っていて、リオくんとうまくいく未来は見えなかった。ていうかリオくんクズだし。
 
だけどヒメコがやっぱり愛おしくて、幸せになって欲しくて、何の不純物もないまっさらな想いが眩しくて、ヒメコの想いが報われたらいいのにと思っていた。
あれからヒメコが海へ戻ったのか、人間の住む世界で暮らし続けたのかはわからないけれど、何となくあのまま人間の世界で暮らしていくんじゃないかなと思った。
 
 

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(EPOCH MAN twitterより)

 

舞台美術が素晴らしかった。真っ暗な壁にぺかぺかとした鱗のような、岩のような、無彩色の四角い素材が張りつめられていて、高さもあって、光が差し込むと劇場空間そのものが海の洞窟のように思えた。
ヒメコが陸の上へ這い上がっていくシーンを客席という低い場所から見上げる体験は、言いようのない興奮と感動があった。
張り巡らされた壁には光線が仕込まれていて、ヒメコが冒険するエレクトリックシティ・東京にもなった。
水族館にデートに行くシーンでは、まるで大きな水槽のように変化して見えた。ヒメコと一緒に、大きな水槽を眺めて見上げている気持ちになった。
 
 
小道具や、衣装や、メイクや、照明すべてが最高で、美しくて、とにかく感動した。
一人芝居という名目で演じられているものの、実際には袖でマルシェII世さんによるドラムパーカッションの生演奏がされていた。この生演奏がまた素晴らしくて、というのもマルシェII世さんがヒメコを見つめる目線が何よりも愛情に溢れていた。ヒメコの一挙一動をニコニコと見守り、時には憂いの表情を向けながら、時には二人でキャッキャ戯れながら。繊細でダイナミックな音色によって、海の中の静けさや、東京の雑踏や、恋のときめきや葛藤がより情緒的に感じられた。
マルシェII世さんの存在が、ヒメコをヒメコとして煌かせてくれたように思う。これだから生演奏はたまらない!
 
 
 
たった3,500円でこんなにすごいものが見れるなんて!と感動した。しかも一人芝居。本当に満ち足りた気持ちになった。「千歳船橋」駅という滅多に行く用事のない場所だったけど、ついさっき見たものを思い出すと泣けてきて、涙を垂れ流しながら帰った。パンフレットも素晴らしくて、小沢さんによる制作日誌だった。撮影の様子や、フライヤーの没案、舞台美術(のモック)試行錯誤した形跡、小道具を作っていく過程。こういうの読みたかった!という内容だった。解体新書的な。すっごく良かった。買って良かった。クオリティ高杉。
 
 
「一人芝居」というジャンルがもともと好きだ。その俳優の名刺代わりというか俳優の在り方や武器そのものを詰め込んだ至極のラブレターだと思う。
 
私の推しにもライフワークとも言える「一人芝居」の演目がある。私にとっても大大大好きな作品。世界中の人に見てもらいたい演目。
「推し」が「一人芝居」をやったことがある人ってどれくらいいるのかな。
推しと共演者の絡みとか、座組みの仲の良さとかそういうのにめちゃくちゃ弱い(萌える)タチなので推しにはどんどん出演作を増やしてもらいたい・共演者や友達を増やして欲しいと思ってる。だけどやっぱり一人芝居ってめちゃくちゃ贅沢で、めちゃくちゃ良い。
 
「推し」を持つ全てのおたくたちに、「推しの一人芝居」という最高の体験をしてもらいたい。推しの覚悟とか、大事なものとか、熱意とか、俳優としての本質とか、愛情がこれでもかというほど詰まってて、好きの大洪水になります。
また推しの一人芝居も見たいなあ。近々見れる予感もあるんだけど。どうかなあ。
 
 
めちゃくちゃとりとめもない感想ですけど、小沢さんのお芝居、他の方にも見ていただきたいです。本当に。是非是非!おすすめ!
 

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【キャスト・スタッフ】
出演・作・演出・美術 小沢道成
ドラムパーカッション演奏 マルシェⅡ世(もるつオーケストラ)
舞台監督 村田明(クロスオーバー)
照明 中佐真梨香(空間企画)
音響 堀江潤
衣裳 藤谷香子(FAIFAI)
ヘアメイク 笹川ともか(プランギカシー)
宣伝美術 藤尾勘太郎(犬と串)
写真 moco
照明操作 磯田浩一(やくぶつ)
稽古場代役 前田隆成
制作協力 上村幸穂(TiA production) 北澤芙未子 佐藤美絋
企画・製作 EPOCH MAN

*1:「一人芝居」というテイを取っているけど実際にはドラム生演奏さんが居て照明さん音響さん制作さんメイクさんその他たくさんのプロフェッショナルが手伝ってくれているので一人でやってるわけじゃないんです、と真摯に語る小沢さんがまた素敵だった